立川ビラ配布有罪判決を支持する
4月11日に最高裁が「ビラ配布は有罪」という判決を下した。この判決に対して朝日新聞は「表現の自由」という視点から一貫して反対の論陣を張っている。一見、朝日の主張は尤もに思われる。ただし、問題を子細に検討すれば、ことはそれほど簡単ではない。私は最高裁の判断を支持する。
公共の場でのビラ配りなら、反対するべきではない。しかし、私有地においても表現の自由がゆるされるかというと、それは全く別問題である。この私有地におけるビラ配りという問題について朝日は意図的に捨象しているのか、あるいは私有地であっても表現の自由が優先されると考えているのか、いずれにせよ国家が介入すべき問題ではないと判断しているようだ。
さて事件は、自衛隊のイラク派遣に反対するビラを「立川自衛隊監視テント村」のメンバー3人がアパートの各戸の新聞受けに投函したことに始まる。3人は住居侵入罪の現行犯で逮捕され長期拘留された。その後表現の自由をめぐって裁判で争われた。新聞受けにビラを配ることくらい何でもないではないか、というのが大方の見方なのだろう。しかし、かつてこの官舎に8年間暮らしていた私からいわせれば、住居侵入罪は当然と思われる。
立川の官舎は航空自衛隊の施設に隣接して、5階建てのアパートが3棟(2棟だったかも)たっており、敷地の回りにはフェンスがある。特に門のようなものはなく、だれでも自由に出入りできる。だからこそ住人の不安は大きい。
私が住んでいた1991年には湾岸戦争をめぐって、隣接する自衛隊の施設めがけて手製のロケット弾が撃ち込まれたことがある。下手をすれば官舎にあたる危険性もあった。また官舎のまわりには、「立川自衛隊監視テント村」のメンバーのように自衛隊員の行動を監視する風体の怪しい輩が時折徘徊していた。パトカーも重点的に巡回していた。
官舎は下士官クラスの一般隊員が住む宿舎で、比較的若い隊員家族が多い。小さな子どもも多い。住人は、世間の自衛隊への風当たりが強くなればなるほど、日常生活でも緊張を強いられる。いつ子どもに危害が加えられるか、住居に侵入されるか、一般のアパートの住人とは異なる緊張の中で暮らしている。
そこへ,部外者立ち入りの看板を無視し、なおかつ異様な風体(なぜか反戦ビラを巻く連中はバンダナを巻いたり、薄汚いジーパンを愛用しているのだろうか)の男女がアパートの一軒一軒にビラを入れたりすれば、住人が警戒するのは当然だろう。どうせ反戦ビラを配るのなら、幹部自衛官やキャリアが暮らす都心のアパートにしたらどうか。一般隊員は仕事として日々の業務をこなしているだけだ。有罪になった3人の職業をみてもあまり社会的にはめぐまれていないようだ。それだけに弱者が弱者を苛めているようで、表現の自由といった問題以前に、社会の悲しい現実を見せつけられているようで事件そのものには本当に哀れをもよおす。
ところで、今回の判決をきいて多くの大学関係者がホッと安堵の胸をなでおろしていることだろう。もし、無罪判決が出れば、大学キャンパスで学外者が自由にビラ配りできるからである。大学構内には許可なく学外者の立ち入りを禁ずるという大学は多い。しかし、表現の自由を盾に学内でのビラ配りや宣伝活動を要求された場合何を根拠に断ればよいのか。この裁判が始まったとき、私は学生部長をしていて、学内でのカルト集団の横行に手を焼いていた。そのため少なからず、この裁判の行方には関心をもっていた。
今日(4月15日)の『朝日新聞』「私の視点」で元国際キリスト教大学の教授の奥平康弘先生(なぜ東大名誉教授と名乗られるのだろうか。反権力を標榜する奥平先生にして東大の権威には弱いのだろうか。元大学教員でいいではないか。なんだか少し悲しい気持ちになった)が、朝日の社論にそった主張された。ICUでもし、カルト集団が学内でキリスト教を否定するビラ配りをしたとして、奥平先生は表現の自由を理由にカルト集団のビラ配りを擁護されるだろうか。朝日にしてからが、もし築地の朝日新聞本社の共用部分で右翼がビラ配りをしたら、表現の自由を理由に彼らを擁護するだろうか。たちどころにガードマンがきて、警察につきだされるだろう。
だからこそ,この問題の背後には、反戦ビラを配布することは正義にかなっているとする暗黙の前提と、自衛隊員ごときが裁判に訴えるなどとはとんでもないとの自衛隊に対する抜き差しがたい蔑視があるように思われてならない。

Comments
お初にごめん!
そんなふうにいわれても、いいたいぜ!
おれは、地域密着ビラ新聞(『いるまんず瓦版』)出して、家に来るホームレスにポスティング代払って、糞、てめえ、あほか、もう来るな、死ね、やっているんだぜ。
ビラ撒きで食い延ばしているおれの友達がぶち込まれて、どうするんじゃい!
猿ぐつわかまされて、海に放り込まれた感じだぜ。
ふざけやがって!
これからは地下新聞に変更、ホームレスにべべ代払って黒装束の忍者やらせにゃならんのか?
ビラ撒きまで空き巣狙いの要領でせにゃならんのか?
そんなスキルがありゃ、誰がホームレスやるか!
万国の労働者諸君、何で吠えんのか。
様子見ているんなら、わしらホームレスが吠えるぞ。
ぶち込んでみろ!
ろくでなしどもめ!
埼玉の片田舎、入間市野田じゃわしらが許さんぞ。
吠えて、吠えて、吠えまくって、拾ってきた野良犬、くん太もいっしょになって、わんわん吠えて、噛みついてやるぞ。
Posted by: 田中洌 | April 15, 2008 at 07:29 PM
いつもブログを楽しみにしています。卒業生です。
門のない大学では大変ですよね。
一応、民法に施設管理権というのがあるので、その権利を行使して一連の活動を禁止する告知は出せるはずです。
住宅へのビラくばりも同様です。
破れば不法侵入が成立します。
出て行かなければ不退去罪も成立します。
自由を訴える方にはその義務として、法令遵守に徹してもらわないとフェアじゃないですよね。
次の更新楽しみにしています。
脈のない文章でごめんなさい。
Posted by: AM | April 21, 2008 at 11:23 PM
お久しぶりです。
私のブログにコメントしていただいたのは先生でしょうか??ご芳名を書き忘れてらっしゃるので、少し悩みましたが、文面から先生だなと推測いたしました。心から感謝申し上げますと共に、失礼な言葉遣いで批判を繰り返したことを平身低頭謝罪いたします。間違っていたら申し訳ありません。
本格的な学術書を書く際は是非ともわたくしを共著者に(笑
ところで、先生が仰るカルト集団ですが、私も子供たちを相手にしていた関係上、大変苦労した覚えがあります。先生が勤務されている大学にも、とあるカルト集団のサークルがありますし、最近では、仏教系の過激派が相模原に進出してきているようですね。勧誘に応じないとみるや拉致して監禁される子供が多くいました。さらにはその子供たちが学校や知り合いの大人を勧誘していくという方式を取っており、私達のかつての同僚も被害にあっています。
死んだお袋がいつも「東京は怖いところだから気をつけろ」と言っていましたが、本当にそうですね。こちらは布教や勧誘をしようにも人がいないですから(笑
ながながと失礼しました。先生のご業績をお祈りいたしております。またコメントいただけると幸いです。
Posted by: tm | April 23, 2008 at 07:10 PM