« April 2008 | Main | December 2008 »

June 27, 2008

米国の対北宥和政策と日米同盟

 予想通りにというか、規定路線通りに米国が対北朝鮮政策を大転換し、北朝鮮に対するテロ国家指定を解除した。しかも、保有する核兵器の数、濃縮ウランの生産、他国への核技術援助については不明のままである。また申告する内容についても、はたしてどれほどの期間でいかに正確に検証できるか危ぶまれている。
 このブログでは昨年以来米国の対北朝鮮政策が変わりつつあること、そしてそれは日米同盟の破綻にほかならないこと(「日米同盟の『不都合な真実』」、「今こそ日米同盟の再考を」)、さらに日本の独自外交として自主核武装を選択肢としてもつこと(「米朝国交回復と自主核武装宣言」、「日本核武装論」、「核の傘の信頼性」)を主張した。また昨年11月にアップした「日米同盟の破綻」では、まさに今日の状況を見越した分析をした。あらためて「日米同盟の破綻」を踏まえて、将来の日米同盟について考察しておきたい。
 米国が北朝鮮をテロ国家指定から解除したことは、「米朝国交回復と自主核武装宣言」で明らかにしたように、早晩米朝国交回復が行われるということである。米国の狙いは米朝国交回復により北朝鮮への影響力を確保し、朝鮮半島への影響力を確保し、中国への朝鮮半島に対する影響力に拮抗することにある。
 北朝鮮の核兵器については、北朝鮮の狙い通りに、米国はインドやパキスタンのように核兵器保有国として管理していくつもりであろう。北に核兵器を放棄させることが事実上無理と判断したからこそ今回の宥和政策で核兵器の申告を除外したのである。実際、過去の事例をみても核兵器を自主開発して放棄した国は例外的に南アフリカしかない。ただし、南アフリカが放棄したのは「テロ時代の核拡散」で述べたが、デクラーク白人政権や白人社会がマンデラ黒人政権が核兵器を保有することを恐れたからである。北朝鮮は絶対に核兵器を手放さないし、またプルトニウム型の核兵器は中止しても、ウラン型の核兵器開発は今後も続けるだろう。だからこそ高濃度ウランについての申告も除外したのである。
 また北朝鮮の核兵器は、運搬手段であるミサイルの開発がない状況では、北朝鮮がテロリストや他国に核兵器や技術を移転しない限り、米国にとっては全く脅威ではない。だからこそ米国は今回の申告で北朝鮮に核技術や核兵器を移転しないと約束させたのである。 しかし、日本にとっては脅威以外の何物でもない。今回の米朝宥和で今後北の核兵器が日本にしか向けられないことが明らかになった。日本だけが北朝鮮の核の脅威に怯えるのである。「核の傘の信頼性」で分析したように米国の核の傘は開かないどころか、核の傘などもはや存在しない。日本が北の核兵器に対抗するには、北が核兵器を放棄しないことを前提にした上で日本独自の戦略を確立する以外に方法はない。それには古典的ではあるが、「日本核武装論」で提案したように、核兵器による相互確証破壊戦略以外にない。
 今回の米国の対北宥和政策で明らかになったことは、第1に核兵器開発は止められないということである。自爆テロをちらつかせながら相手から要求を引き出す弱者の恫喝に大国はもはや対抗するすべを持たない。武力で開発を阻止しようとしても、イラクの混乱をみれば、米国は二度と武力制裁などは考えないだろう。またイラクやシリアに対するイスラエルの核施設攻撃も先制攻撃ではなく予防攻撃として国際世論の非難を浴びることになる。では経済制裁はどうかといえば、北朝鮮の例をみてもわかるが、各国が北朝鮮に経済支援をする結果となり、まったく逆効果だ。
 イランのような反米国家にとって今回の米国の対北宥和政策は心弾む結果となったであろう。もはやいかなる手段を講じても米国をはじめEU諸国もイランの核兵器開発をおしとどめることはできないとういことである。超大国に対抗するには、弱小国家は大国のアキレス腱である自爆テロか核兵器を保有すればよいのである。
 第2に明らかになったことは、日米同盟が調印49年目にして破綻したということである。日本は対北朝鮮政策を日本に有利に進めるために日米同盟を重視する戦略をとってきた。イラクへの自衛隊の派遣などは、日本の対北戦略の要であった。しかし、それは日本の思い込みにしかすぎなかった。またMD(ミサイル防衛)も北朝鮮のミサイルを防止するために導入しようとしてきた。しかし、米国にとって北のミサイルがもはや脅威とならない以上、米国が真剣にMDシステムを東アジアとりわけ日本海周辺に構築する意味はない。であればこそ日本は日米同盟の証であった対イラク政策もMDも再考する必要がある。
 それ以上に重要なのは、そもそも日本の安全保障に役に立たない日米安全保障同盟そのものを根底から考え直す必要がある。一体日米安全保障条約は何の役に立っているのか。日本は米国の戦略から独立した独自の戦略を構築しなければならない。その上で再度日米同盟が必要であるのなら、条約を結び直せばよい。「旧い戦争」の時代の日米同盟は破綻したのである。「新しい戦争」の時代の新しい日米同盟が必要である。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« April 2008 | Main | December 2008 »