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November 09, 2009

鳩山政権の政策のブレ

 鳩山政権の外交政策がブレにブレている。
 岡田外務大臣は普天間基地の海兵隊基地を米空軍が管理する嘉手納に統合しようとしている。この統合案を外相に入れ知恵したのは、外務政務次官の長島昭久であろう。彼は、依然に嘉手納統合案を主調していたことがある。また長島に入れ知恵したのは、彼が元いたワシントンの民主統計シンクタンク・ブルッキングス研究所か、民主党系に近い、たとえばマイケル・オハンロンのような研究者ではないか。長島も岡田も、民主党系の人脈を通じて嘉手納統合案が多少なりとも実現性が高いと踏んだのではないか。
 また岡田もかつては民主党色の強いハーバード大学国際問題研究所の日米関係プログラムに在籍したことがあり、民主党系におそらく強い人脈を持っているのだろう。しかし、当時同研究所の所長であり、かつては国務次官補として1996年の日米安保の再定義を主導したジョセフ・ナイ教授は辺野古への移設を支持している。米国内でも意見は割れているようだ。
 他方、北沢防衛大臣のブレも酷いものである。県外移設を主張していたかと思えば、次には県内移設を、そして今では辺野古以外には選択肢はないとまでほのめかすようになった。さらにアフガニスタンのISAFへの自衛隊員派遣まで言及し、鳩山首相が直ちにそれを否定する始末だ。神輿と大臣は軽い方がよい、とは私が防衛研究所時代に官僚からよく聞いた話だ。北沢大臣は完全に官僚に籠絡されたようだ。
 さて当の首相も過去の集団的自衛権を容認する発言を曖昧であったとの理由であっさりと撤回するなど、過去の自身の主張からのブレが目立ち始めた。恐らくは社民党との連立や民主党内部の旧社会党系議員を慮ってのことだろうが、いずれは安全保障問題で党内が分裂する事態となりかねない危険を孕んでいる。
 そもそも対米従属路線からの脱却という鳩山首相の主張はアドバルーンとして高く上がりすぎたようだ。しかし、左右両派からの賛成がえられる主張だけに問題を孕んでいる。自民党のタカ派からは対米独立自主武装路線、社民党や公明党のようなハト派やダチョウ派からは対米独立親中非武装路線への画期として賛同が得られる主張だ。また、左右両極からのみならず前原国交大臣のように集団的自衛権を容認し米国と対等な関係を築きたいと考える民主党内の現実主義のフクロウ派からも賛同が得やすい。つまり対米従属からの脱却といえばだれからも反対されることはない。単なる理念だからこそ誰もが賛成する。しかし、一度対等な関係を安全保障で求めようとすると、結局は自主防衛か、少なくとも集団的自衛権の解釈変更による軍事力の強化か、あるいは全く逆に憲法9条を堅持し日米関係を精算して米中との多国間関係をとるかのいずれかである。いずれの政策であれ明確に政策として実行しようとすれば、連立の崩壊、民主党の分裂は避けられない。
 また辺野古問題も連立破綻の契機となる要素を孕んでいる。だからこそ鳩山首相もにわかには政治決断ができずに、ブレにブレているのだろう。県外移設を主張していた以上、嘉手納であれ辺野古であれ、県内移設となれば食言を批判されることは間違いない。たしかにマニフェストには「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とあり、「県外移設」とは一言も書かれていない。しかし、これまで鳩山首相は県外移設が最も望ましいとの主張を再三再四くり返してきたように、やはり県内移設しかも辺野古沖で自民党政権時代の政策を踏襲することになれば、一体何のためのマニフェストだということになりかねない。
 さらに東アジア共同体論は、アジアを「亜細亜」と漢字で書けば、尾崎秀実の「東亜共同体論」と全く変わらない。ましてや、この手のアジア主義は明治からある。樽井藤吉の『大東合邦論』。日本がこうしたアジア共同体論を提起すれば、太平洋戦争の反省が足らないと思われたり、その弱点をつかれて米国や中国あるいは近隣諸国から反発を受けたり、また利用されないとも限らない。
 かつてアメリカのダレス国務長官がアジアにもNATOのような反共軍事同盟を作りたいとアジア諸国に呼びかけたことがある。しかし、かつての敵国と同盟関係を結ぶことにオーストラリア、フィリピンが頑強に抵抗した。結局アジア太平洋には多国間同盟ではなく米国をハブとした日米、日韓、米比、アンザスの二ないし三国間同盟が創設された経緯がある。
 そもそも現在の東アジア共同体論は韓国が提案し、それを中国が利用し、あわてて日本が追随したという経緯がある。東アジア共同体論は長年同案を主張してきた多摩大学学長の寺島実郎が鳩山に吹き込んだのだろう。鳩山首相の東アジア共同体論を聴くと、中江兆民の『三酔人経綸問答』の洋学紳士君を思い出す。南海先生は洋学紳士君の理想について「紳士君の説は、ヨーロッパの学者がその頭の中で発酵さ、言葉や文字では発表したが、まだ世の中に実現されていないところの、眼もまばゆい思想上の瑞雲のようなもの」と述べている。
 鳩山首相の政策がブレているのは、内容空疎な言葉を多用し、中身がないからであろう。インド洋での給油問題について、「単純」延長はしないとおもわせぶりな発言をくり返してきた首相だが、結局、延長はしないということになってしまった。「単純」と言ったのは一体どういう意味合いを含めていたのだろうか。「巧言令色少なし仁」である。

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