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April 07, 2010

紛争の十字路-アフガニスタン-

 ジャーナリストの常岡浩介氏が行方不明になって一週間がたつ。一説にはタリバンが仲間の釈放を求めて誘拐したとの情報がある。しかし、ムスリムで親タリバンの彼が身内同然のタリバンに誘拐されたとはにわかに信じがたい。
 常岡氏のブログ、「さるさる日記」は1年前から時折のぞいてきた。そこから読み取れるのは、明らかに反米、反露の親イスラムのジャーナリストの姿だ。チェチェン紛争やアフガニスタン紛争の取材を通じて、イスラムの人々に対するシンパシーが湧いてきたのだろう。彼の思いは、当然のことながら、制約の多い日本のジャーナリズムの世界には通用しない。長崎放送を退職してフリー・ジャーナリストととして取材を続けていた。
 彼が行方不明になったのは、タリバンの支配地域である北部クンドゥズ州とバグラン州の州境付近だ。一般の外国人がカブールから出るのは至難の技だ。私も2月の訪問時にカブールからほんの目と鼻の先にあるバグラム空軍基地を再訪したいと思った。しかし、かなわなかった。ガイド曰く、取材許可証や特別の理由がなければ途中の検問所を通過できないとのことだった。常岡氏はガイドとともに北部州までいったところをみると、取材許可証で検問所を通過したのだろう。
 常岡氏が何の目的で北部州までいったのかは、よく分からない。単に現在のアフガン情勢を取材しにいったのか、あるいは特定のタリバン幹部とのインタビューが目的だったのか。あるいはそれ以外の何らかの目的があったのか。目的がなんであるにせよ、誘拐されたことで、彼自身がニュースになってしまったのは、ジャーナリストとして大失態だろう。
 冒頭でも記したように常岡氏は反米・反露で親イスラム系のジャーナリストだ。私から見ればジャーナリストの一線を踏み越えるような活動もしている。インテリジェンスの世界でもそれなりの有名人で、ロシアでは彼はペルソナ・ノン・グラータだ。それだけに今回の行方不明事件は、単純にタリバンの仕業とは断定しがたい。深読みすれば、彼の行動を快く思わない勢力、たとえばパキスタン情報部かCIAの仕業かもしれない。あるいは単純に外国人誘拐団の身代金目当ての犯行かもしれない。
 アフガニスタンの情勢は、カルザイ政権+米・英+国連(ISAF)対タリバン+ヘクマティアル派+アルカイダの政府対反政府の二項対立的な紛争ではない。近隣の中央アジア諸国、イラン、パキスタン、中国さらにはインド、米、英、国連などの諸国家の利益やイスラム勢力の思惑が複雑に絡み合った紛争である。アフガニスタンはかつての東西文明の十字路だったが今や紛争の十字路になっている。常岡氏は紛争の十字路に迷い込んだようだ。

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